ロベルト・ホルの世界 ~ シューベルトの心の闇、この世の地獄 [シューベルト:歌曲]
ロベルト・ホルという名前を聞いても、ぴんとこられる方は少ないのではなかろうか。
最近では、宇野功芳氏がことあるごとに激賞し、そのシューベルトの解釈を熱烈に絶賛している。
宇野氏が推薦するディスクは、ロッケンハウス・フェスティヴァルにおけるライヴ録音(UCCP-3078/9)で、一度聴いていただければ、その凄さに開眼していただけることだろう。
「凄さ」と書いたが、図体のでかいバス・バリトンの歌手が、節回したっぷりにオペラを歌っているような風情なのである。大味この上なく、リリックな歌手を好む方には拒絶反応を示すだろう。
といっても、このライヴ録音は1987年。今から21年前も昔の録音である。
このディスクを耳にした私は、ひとつひとつのフレーズに命をかけるような歌い方、今まで聴いたことのないような感情のほとばしりに異常なものを感じ、できる限り最近の録音を耳にしたいと思ったのである。
以前のエントリーで採り上げたのは1995年のスタジオ録音だったが、ホルは抑制しすぎ、ピアノ伴奏は凡庸。今聴くと、ちょっと満足できない出来である。
現在、Preiser Recordsから直販で入手できるCDがある。それは1995年の録音だが、ライヴ録音、それもピアノ伴奏はロッケンハウス・フェスティヴァルと同じ、マイセンベルク!このマイセンベルクのピアノがまた最高に素晴らしいのだ。
ベスト・パートナーと組んだ6年後のライヴ。ホルの歌声は渋みを増し、劇的すぎる表情付けもなくなり、噛み締めるように感情の襞に触れていく。
マイセンベルクのピアノは、第1曲目「おやすみ」の冒頭から深刻の極み。まるで別の世界から響いてくるような不吉な美しさだ。
それにしても、ホルの「冬の旅」を聴いていると、どんどん悲しくなり、つらくなり、いたたまれなくなる。でも、これが本当のシューベルトなのだ。怒り、嘆き、世界を呪う、こんなはずではなかったのだ、と。
kitakenさん、久し振りの投稿です。
ロベルト・ホルを聴きながら…。
さて、先だって発売されし The Celebrated Early Recordings 1949-52 Juilliard 6枚組。殿は未だお聴きになってないかも?
LPからの復刻との事ですけど、師匠のご意見をお聞かせ下さい。
急きはしませんので。
宜しくお願い申し上げます。
by Dali99 (2012-07-01 08:48)