フルトヴェングラーの「田園」~やっと聴くことができたCC35-3163 [ウィルヘルム・フルトヴェングラー (cond.)]
先日、中古CD店に出かける。
中古CD店では、狭い通り道に座り込んでいる大きなリュックを背負っているご年配の方や、一人で棚を占領している人生の大先輩に辟易しつつ、遠目からCDを見ることにしている。
目ぼしいものは特になく、さあ、帰ろうと思っていたところ、もう一軒あったっけ、と入った店があった。
そこに新品未開封のフルトヴェングラー/ウィーン・フィルの第9(1953/05/31)、それもRODOLPHE(RPC 32465)があったので入手。
数回聴いて失望。
強烈な擬似ステレオによって音がぼわーんとしており、鮮度悪く、濁ったような音空間。弦と管楽器のバランスや、ソリストと合唱の迫真の歌唱など、感動的なこと多々なのだが、如何せんこれはひどい。フルトヴェングラーがかわいそうだ。投げつけてやりたい衝動に駆られたが、大切にしまい直す。
最近、フルトヴェングラーのディスクでとびっきり感動したのは、これだ。
私は個人的にベートーヴェンの交響曲第6番を愛好するものではないのだが、フルトヴェングラーの演奏を聴いて感動したことがある。
その時のディスクは、伊EMIが廉価盤で発売した全集中の一枚で、濃厚・芳醇なサウンドに魅せられたのだ。
今でこそ、いろいろ悪口は言えるCDだが(イコライジングがきつい、音をいじくりすぎetc)、フルトヴェングラーの音を最新技術を使って、ステレオに負けないくらいの音質をつくろうという意気込みが素晴らしい。
こういう姿勢は東芝EMIにはないだろう。
初期CDファンの私は、写真のディスク(CC35-3163)を永らく求めてきたのだが、昨年も暮れに差し掛かって、拙BLOGをご覧頂いている愛好家の方がご好意で譲り受けることができた。
この場を借りて、心より御礼申し上げます。
一聴三嘆とはこのことで、古い全集盤(CC30-3361/66)では地味でモノクロだった当演奏が、極めて瑞々しく、ウィーン・フィルの色彩感溢れる音色で再現されている。
このCDの感想を書くために、同曲同演異リマスタ盤を手にできる限り、比較試聴したのだが、群を抜いてこの盤が優れている。
特に一楽章であの美しい主題が重層的にハーモニーを形作っていくところなど、うっとりするような夢幻があるし、柔らかい管楽器の響きも、ウィーンの森の野鳥とでも呼びたくなるような素朴な味わいがある。
EMIの他の正規録音は、ことベートーヴェンに関していえば、弦の音にリアリティーがない。弦と弦がぶつかりあって絹ずれのような音の深みを出したり、軋むような木製の響きなどがオフ・マイクの録音のせいでややぼやけているのだ。宇野功芳氏の指摘する「きれいごと」の録音効果である。
ワルターのSP録音などを耳にしていただければ、その差は歴然としていよう。やはり、当時のEMIの録音技術には首を傾げざるをえない。今一歩の生々しさが欲しかった。
もっとも、初期LPからの板起こし(それも良質のもの)であれば、上に述べたような問題もかなり改善されはする。私が指摘したいのは、LPとCDでこれほどまでに違う音質を生み出すEMIの技術の問題であり、音源の確保という基本的なことをきちんとして欲しいのである。
私の個人的な見解を述べれば、EMIの初期CDシリーズの中では、この「田園」が一番美しいと思う。響きも出てくる音もウィーン・フィル特有の味をまだ保持しているし、何より不自然さがない。
ちなみに、この演奏で私が最も愛するのは「嵐」である。
ジャニーズ事務所の五人組で、キャスター、ドラマ、歌手、バラエティーと様々な活動をし、SMAPに匹敵する人気を獲得しつつある人気グループだ。僕は動物好きな相葉氏に好感が持てる、というわけだ。
・・・もとい、四楽章のことである。フルトヴェングラーの棒はまるで魔法である。誰もあまり指摘しないが、こんなに凄絶でありながら、音が濁らず、それでいてけっして機械音楽のような整然さを感じさせない情感あるアンサンブルが何故可能なのだろうか。楽器の音、という以上に、まさしく精神の音が吹き荒れており、心にずっしりとした感動を与えるのである。
大切に聴き続けたい名盤である。
お邪魔いたします。
>‥‥人生の大先輩に辟易しつつ、
中古CD店のクラシックを漁っている中年以上の男性、どうにもお行儀のワルい方々が多いです~。斜めに並べて置くタイプ(こんなふう → /////)の棚のCDを、パタンパタンパタンと音を立てて見たあと、ディスクがすべて前に倒れた(\\\...)ままにして去る紳士は、私はニラみつけてしまいます^^;。
さて、フルトヴェングラーは4枚ほどしか持っていず、ファンとはいえない者なのでお邪魔しがたいテーマなのですが、東芝EMIの古いリリースのがよかったとは、しかも同社で出した全集よりよい、というのはどんなテープを使ったのか、興味津々ですが、大慶に存じます。
原盤番号は、やはり「2DJ-xxxx」なのでしょうか。
私は、'44年のヴィーン・フィルの『英雄』を東芝盤(ただしTOCE規格)で聴き、悪くないものの、低域が豊か過ぎ、露メロディアの(ハムのちょっと気になる箇処のある^^)盤に買い換えたことがあります。これも、聴き込んでおられる方にはNGかと思いますが。
>ジャニーズ事務所の五人組で、
おっとっと‥‥‥櫻井 翔氏^^は《NEWS ZERO》ですっかりキャスターの雰囲気を身につけましたね。『嵐の宿題くん』では、ぶっつけ本番の実況が、小倉智昭氏よりホンモノでした。
by へうたむ/Bluegourd (2009-01-17 01:49)
「実況」→「ニュース解説」でした^^;。
by へうたむ (2009-01-17 01:50)
1953/5/31 珍しいものを見つけられましたね。
この擬似ステは強烈ですね。
日本協会盤をお貸しできますので、言ってください。
「田園」は、ブライトクランク初出物(「第7」と同じ黒ジャケのもの)
も良いですが、やはりこのCC35になるでしょう。
by furtwan (2009-01-17 20:05)
>へうたむ/Bluegourd様
こんにちは、コメントをありがとうございます。
そうでしたか。やっぱり、貴兄もそのように感じられますか。若い方がお店に来ていても、むしろ若い方のほうが礼儀があるように感じます。
コレクターの方も多いでしょうから、我先にというお気持ちもよくわかるのですが、まずその前にせっかく高尚なご趣味をお持ちなのですから、真摯たれ、紳士たれ、と思います。
フルトヴェングラーをあまり聴かれないのですね。現代の録音に比すれば、古めかしい骨董品のようなものもありますが、雨の夜や、星の美しい夜、あるいはお酒でほろ酔いになった折に取り出すと現実と夢を彷徨うような心地がします。こういう効果のある演奏というのはあまりないですね。
「ウラニアのエロイカ」は以前も書きましたが、あまり好きな演奏ではありません。ただ、ご指摘の露メロディア盤はハムがあるものの、音の輪郭がしっかりとしていて好きです。凶暴な演奏に聴こえないのもいいですね。
>furtwan様
こんにちは、コメントをありがとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。
調べてみると、相当貴重な盤のようですが、新品未開封でした。
期待して聴いてみたのですが、世評ほど良いとは思われない、むしろひどい、というのが感想です。
音源自体は良いと思いますが・・・
日本協会盤は是非入手してみたいもので、これまたレアですよね。探索していますが、見かけたことすらありま千円(←古いギャグ)。
by kitaken (2009-01-17 23:35)
はじめまして。
だいぶ古い記事ですが、コメントさせていただきます。
若い頃からフルトヴェングラーの「田園」が好きで、記事中の初期CDは昔よく聴いておりました。私が所有するのは国内盤ではなく、輸入盤のCDC-7-47121-2というもので、ジャケットは同じです。後発のものと比較したことがないので音の良し悪しは言及できませんが、こちらも結構良い音で鳴ります。ちなみに国内盤と音質の差があるかどうかはわかりませんが。
by 岡本浩和 (2010-10-16 22:48)
岡本浩和さま
コメントをありがとうございます。
おそらく、お持ちの輸入盤は、東芝EMIが作成したもので、
海外で発売された初期CDで、音質も同じものとかと思われます。
素晴らしい演奏ですね。
by kitaken (2011-01-27 16:37)