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功芳の「第9」 [ベートーヴェン:交響曲]

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宇野功芳(演奏の感想のため、敬称略)とは、私が十代の頃、文通をしていたことがあります。ハガキに独特の青いインクの万年筆で、読みにくい文字(若い時分にはそう感じた)が懐かしく思い出される。

私は若造だったし、様々なことをぶつけたのを記憶している。初めてお会いしたのは、新星日本交響楽団とのラストリサイタル。弟さんが亡くなり、そんな時期のコンサートだったが、握手して感想を書いたものをお渡ししたのを思い出す。

私は、音楽評論をする人の指揮で満足したCDは一枚もない、それは宇野功芳の場合でもそうでした。最近では福島章恭によるブルックナー、バッハの「ロ短調ミサ」も、ごめんなさい、という感想。モーツァルトのピアノ・コンツェルトは例外として(これはピアニストが素晴らしいのだ)。

さて、宇野功芳85歳の第9。できるだけ素直な感想を簡潔に。

エクストンのパッケージがおかしい。おそらくジャケットになるものが、ケース裏面になり、ジャケットは収録内容に。あべこべだ。裏返すと、白黒の宇野功芳の肖像。むーん。これは私のだけ?

録音はたっぷりとしていて、いつものエクストンの豊潤な音。オーケストラは優秀で、これは宇野功芳の解釈というよりも、奏者たちの技術の素晴らしさに感銘を受けた次第。

演奏について。これまで新星日本交響楽団、アンサンブルSAKURAのCDを耳にしたが、「解釈」という点ではこれが最終結論なのだろう。完成度は高い。

基本的な方向性は変わっておらず、長大な一楽章、再現部の巨大なデフォルメ、終楽章のフルオーケストラによる序奏部の歓喜主題のスローテンポなど、相変わらず。

ただし、オーケストラの技術が優秀であり、そしてまた、ソリストも合唱も優秀なため、これまでのCDで感じた違和感や恣意的な印象がかなり薄い。一楽章は、好き嫌いはあろうとも、一度は聴いておきたい表情付けが多いし(色々考えさせられた)、テンポが伸縮自在ながら、打楽器の強打や金管の迫力など、メンゲルベルクみたいだ。2楽章は快速で、新星日本交響楽団とのライヴよりもずっと自然。トリオはホルンといい、弦といい美しいし、三楽章は速いテンポでよく流れ、偏見なく感動しました。美しい!終楽章は前記のような部分があるとは言え、最後のプレスティッシモに至るまで熱い。さすがに、フルトヴェングラーほどの大爆発にはなっていないが(ご本人もライナーノートで「小爆発に終わってしまった」とある)。解釈のいくつかで疑問はあるものの、これは名演だと思います。

オンリーワンの演奏だろう。第9のベスト盤にはならないが、新しい第9像を見せてもらった演奏だ。

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