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仏フルトヴェングラー協会の新譜を聴く (SWF 091) [ウィルヘルム・フルトヴェングラー (cond.)]

SWF091.jpg

 残念ながら、当盤はフルトヴェングラーの権威たる協会が作成したCDとはとても思えない。

 もともと、この2番(フルトヴェングラー唯一の録音)、8番(ストックホルム・フィル)は録音が劣悪で、がさがさとした雑音の中で、演奏の輪郭だけしか捉え切れないような、そんな音源である。

 もっとも、いくつかのCDで聴けば、たとえば2番ならば、IRON NEEDLE (IN-1421) で聴けば、ウィーン・フィルの爛熟し切った艶のある響きは楽しめるし、CDも初期のものであれば、8番も演奏のニュアンスをぐっと感じやすくなる。

 しかしながら、日ごろの観賞用としては敬遠している。いくら、フルトヴェングラーでも。 

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 昔、こんな経験をした。

 NHKでムラヴィンスキーによるシューベルト(「未完成」)とショスタコーヴィチ(5番シンフォニー)が放送された。

 司会は故・黒田恭一氏で、新発見の映像だと述べられていた。

 私の恩師は、その映像をヴィデオで3倍速かなんかで録画。

 見てみると、すさまじいびりつきとヒステリックな音。電子音でビービー鳴っているような感じ。

 でも、演奏の様はまさに感動的で、見入るうちに、普通のシューベルトもショスタコーヴィチも聴きたくなくなった。

 ムラヴィンスキーならどうかとCDで聴いてみたら、これも満足できず。大人しい演奏。

 すなわち、凄まじく劣悪な音で聴いたせいか、変に凄みを増し、シューベルトが何か恐怖映画のようなショッキングなものに変わったのだ。 

 まだ思春期の学生だった私は、「シューベルト、すげえっ!」って思った。

 思春期の、心のナイーヴな部分に(こういうこと自分で書いていてゲロゲロですが)、ざっくりとその衝撃が植えつけられる。

 こういうのを聴くと、美観が損なわれる可能性があるらしい。

 科学的根拠はない。ただ、未だに私はその影響をひきずっていて、シューベルトの「未完成」はムラヴィンスキーの東京ライヴ (ALTUS) でなければ、受けつけないくらいだ。

 これは、その劣悪なヴィデオで見た印象に近い。でも、何かが違う。

 そういうわけで、モノラル録音、それも状態を悪いのを聴いていると同じように耳がおかしくなる気がしてならない。

 少しでも良い音で、少しでもリアリティーのある音を、と求めるのは、美観を守るためには当然の欲求と言えなくもない。

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 閑話休題。

 そんな折(どんな折?)、フランス・フルトヴェングラー協会が当録音のリマスタリングに挑んだという。

 結果は惨敗で、リマスタリングの担当者の感性を疑うものだった。

 極めてステレオ・タイプなリマスタリングが行われている。

 ノイズをコンピューターでカットし、表面的に聴きやすくする。それによって、楽器の音色(ねいろ)やホール・トーンも除去、次に、低音がややだぶつくので、低音もばっさりカット。高・低のバランスを良くし、こじんまりとまとめ、スケール・ダウン。

 文字では音をたとえ辛いので、初の試みとして、擬音でお届けしてみます(←悪ノリ)。

 ティンパニ、ポンポンポーン(軽い)、ヴァイオリン、シャカシャカシャカ(乾燥肌)、チェロ、ギュッギュッギュッ(滑りが悪い)。管、ピーピーピー(え、楽器?)。付録として、奥行きなしのまったり平板な空間。

 ・・・。シロウトの私でも、これはいくらなんでもひどかねえか、と思わせる代物じゃ。

 きっと、私の耳が悪いのでしょう。あるいは、安物の装置が悪いのでしょう。高級オーディオで鳴らせば感動的なのでしょうか。今度、マイミクさんのご自宅で鳴らさせてもらいましょう。

 今のところ、買って損した。

 一消費者の小言です、あくまで。

 風呂入って、寝ます。


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コメント 2

furtwan

こんにちは。

>>ティンパニ、ポンポンポーン(軽い)、ヴァイオリン、シャカシャカシャカ(乾燥肌)、チェロ、ギュッギュッギュッ(滑りが悪い)。管、ピーピーピー(え、楽器?)。付録として、奥行きなしのまったり平板な空間。

わたくしもそのように聴きました。
自分の耳が悪いかと思いましたが、同じように聴かれている方がいて、安心しました。
TAHRAのバイロイトの第9と同じく、東芝のコピーではとも言われています。
やはりリマスター担当の品格と感性が問われて然るべきでしょう。
by furtwan (2010-03-15 16:48) 

kitaken

furtwanさま

こんにちは。これは個人的には最悪のリマスタリングでした。

もっと問題なのは、これが協会の品であることであり、これがオーソライズの音だという誤解を生むのではないかということです。

海外の権威だから、と有難がるのはやめたいところで、ちょっと過激なことを申し上げれば(分不相応ですが)、権威を名乗る資格のない音質といいたいところです。

もちろん、音質など関係ない、どんな劣悪な録音でも、演奏の素晴らしさは堪能できるというファンの方々もおられますが、私はだめなのものはどんどん疑義を出すべきだと感じます。

現状、もっと安価で、IRON NEEDLEのようなディスクや、8番だったら、他に求めたいところです。
by kitaken (2010-03-15 23:01) 

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