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フルトヴェングラーのSACD [ウィルヘルム・フルトヴェングラー (cond.)]

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 巨匠フルトヴェングラーの生誕125周年を記念して、EMIは音源のリマスターとSACD化を計画、

 2011年1月19日に日本のみで発売されることになった。

 その数日前に発売されていたThe Great EMI Recordings Boxは、今回のSACD用のマスターをCDにプレスしたもので、こちらも一定の評価を得ているようだ。

 CD層で聴くリマスターの音は、ベートーヴェンに限って言えば、なかなかのものだと思う。

 世評の高いTOCE7530-4の音が好きではないので、今回のリマスターは音により芯があり、彫りの深い表情がくっきりと聴き取れるようになった。

 音色感はあまり感じられないし、臨場感や空気感はノイズ・リダクションによって失われている感はあるが、EMIに残っているマスター・テープは健在だということをうかがわせる音質に仕上がっている。

 セッション録音の1番、3番、4番、5番、6番は特に出来が良い。

 そして新発見と噂されている7番のマスター・テープ。これはLP用に作られた際の別マスターに過ぎないようで、終楽章の女声が混入している(除去の後が感じられる)。

 しかしながら、従来あった3楽章の音の濁りや打楽器の残響の不自然さなどはなく、鮮度は上がっていると思う。伸びやかになり、演奏がより楽しめるようになったのだ。

 一番残念なのは、第9である。1楽章に顕著に感じられるポイントだが、ステージ上での物音、観客の咳など、そういった雑音は細心の注意を払って除去されているのだ。

 そうすることによって、会場全体の張り詰めた空気感や聴衆との感動の共有は期待できない。

 演奏自体の音質も若干こもった印象を受ける。ただし、音自体の細かな情報量は上がっており、たとえば終楽章最後の部分はずっと自然に仕上がっている。

 以上の感想はCDに限ったことで、これを踏まえれば好き好きの問題でTOCE7530-4に匹敵するリマスターだと感じる。第9に関して言えば、TOCE7530-4のほうが違和感がなかった。

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 今回のテーマはSACDである。

 当方の所持している再生装置はおもちゃのようなものであり、ゼンハイザーのヘッドホンHD650と

マランツのSA8004という普及品である。

 このような安物のオーディオでも、SACD化のメリットを痛く感じ入った。そして、CD層だけ聴いていても話にならないことを。

 全体の印象としては、ぐっと音像の広がりが増し、全ての楽器の存在感が増す。弦の衣擦れのような音はしゃきっと締まる。フルート、オーボエ、ホルン、といった管楽器たちの響きは一層クリアになり、高・低のバランスも最上のものになる。

 さらに、細かい表情がはっきりと伝わるようになることで、今までとは違う印象を受ける箇所もある。

たとえば、エロイカの三楽章。こんなに彫りの深い表情だったかという印象。もちろん、初期LPでもそれは聴き取れるかもしれないが、落ち着いて耳を澄ますといろいろなことが語りかけてくるような感じなのだ。

 音色にも変化がある。音自体がムジークフェラインの響きを光彩のように秘めており、ぬくもりと滑らかさがあって、うっとりするほどだ。

 初期LPからの板起こしに分があるとすれば、それは当時の臨場感とか雰囲気であり、音自体の原音忠実度はSACDが上であると言わざるを得ない。

 今回のリマスター作業は個人的には感心しない。Auditeがやったような、巧妙なリマスタリングによって演奏音以外の「雑味」をきれいさっぱり洗い流し、素材の「生の味」だけを大切にしようとする姿勢。

 しかし、年代もののワインから雑味をとったら、結局そこにあった複雑な味わいの何パーセントかは確実に失われるはずだ。

 第9も既存のCDに比べて、かなりの情報量がある。それでも、ノイズカットをしなければ、さらに臨場感があったろうにと思えてならない。SACDレイヤで聴けば、不満はあまりないけれども。それでも、である。

 もし望めることがあるとすれば、ノイズカットは不要。マスターから取り込んだ音源は何のフィルターもかけずに(最低限度のイコライジング程度は必要か?テープの磨耗や伸びによる音程のばらつきを抑えるなど)、そのままSACD化してほしいということである。

 


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